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ベトナムの裾野産業 その2 主要産業の特徴

11:25 - 04/04/2022

筆者の研究によると、ベトナムの主要な各産業には明確な相違点がある。以下に詳しく述べていく。
①バイク:ベトナムのバイクの市場規模は世界第4位だが、バイクの新規購入者の割合は世界最1位である。これは大量生産によるメリット(製造コスト低下や生産性向上)が得られるため、メーカーにとっては魅力的な点だ。現地調達をする際、各工程で専門化されたサプライヤーが容易に見つかり、市場の需要から形成されたサプライチェーンなので国の支援策を必要としない。実際、バイク製造における現地調達率は80%以上に達した。Cosmos、Legroup、Manh Quangなど多くの地場企業がバイク関連部品製造のトップ企業に成長し、ホンダやヤマハ、ピアジオなどのバイクメーカーの1次サプライヤーとなった。
②自動車:バイク産業とは開発条件がまったく異なる。トヨタ、ホンダ、マツダ(THACOの工場で組立)、ヒュンダイ、キア、フォードなど世界的なメーカーがベトナムに自動車組立工場を建設した。近年、自動車の市場規模は年間20万台に達し、毎年数十種類の車両が国内で組み立てられている。それにも関わらず、各種部品の国内生産量は年間1~2万個にしか届かない。これでは生産量が少な過ぎて投資家を誘致するのは困難である。自動車部品製造はバイク部品製造に比べ機械・設備、人材育成、管理システムへの投資額が多く、法人税や土地代引き下げなどのインセンティブがあるとしても、自動車部品のサプライチェーンの開発は促せない。
ベトナムには自動車部品を供給している企業は300社以上あり、そのほとんどがFDI企業だ。また、重要な部品は海外から輸入する必要がある。こうした状況を改善するため、最近、自動車メーカーは国内サプライチェーンの構築に向け、ローカル企業に対し製造技術、管理技術、工場の改善などのサポートをしている。その結果、Hanoi Plastics JSC(樹脂部品)、Legroup(プレス部品)など自動車産業のサプライチェーンに参加するベトナム企業も出てきた。しかし、企業数と製造できる部品数はまだわずかだ。
③電子部品:数十億米ドルのFDIを誘致し、輸出額の拡大に大きく貢献している。生産量は非常に多く、いま最も注目されている産業の1つだ。しかし、土地・インフラ・組立工程での所得税のインセンティブや安価な労働力があることに加え、部品を輸入する際の関税障壁がないため、通常は上達に長い期間を要する国内生産を実現する必要性が低い。そのため4P、Thanh Long Electronics、Viettronics等のような電子部品製造のベトナム企業は非常に少ない。
④鉄鋼:鉄鋼業を発展させることは、重工業政策の立案者の初期段階からの願望だが、現在は建設用鋼材の生産が過剰になり、工業用鋼材はほとんどない。その一方、鉄鋼業でベトナムに後れをとっていた韓国や日本などの鉄鋼業界は、国内の需要を満たすだけでなく、海外への輸出も増やしている。ベトナムも現在、これらの国々から工業用鋼材を輸入している。
⑤加工:ベトナムでは現在、低い難易度から高い難易度までのほとんどの加工に対応できる。企業数が最も多いのは、樹脂成型、機械加工(フライス、旋削)、プレス、板金、金型(精密プレス金型を除く)、治具、自動化部品など。上記分野において、ベトナム企業は製造技術、管理技術ともに高度に発達しており、製品の品質は外国企業に劣らない。それに対し、コーティング、熱処理、電子部品、マイクロサイズの高硬度加工部品などの一部の分野では、対応できるベトナム企業は非常に少なく、外国企業がまだ圧倒的な優位性を持っている。


全体の日本語記事を次のリンクからご覧ください:エミダスマガジン2021年5月号 https://issuu.com/ncnetworkvn/docs/emidas17_low
 

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